なぜぼくは、「想い出のフライヤー展」をやろうと思ったのか。

―こんにちは。今回はインタビューをお受け下さりありがとうございます。というか、なぜインタビューを受けることにしたのですか?
話せば単純なことなんだけれど、いくつかネットメディアにプレスリリースを打ったりしたんだけれど、実のところ反応が無くて。やっぱりネットメディアって、メジャーが好きなんですよ。「フライヤー展にあの大物アーティストが出品」となると記事にしやすいけれど、そういう派手さが無いとなかなか取り上げてもらいにくい。自分が音楽雑誌の編集をやっていたからよく分かるけれど、特に音楽の世界はメジャー中心だね。注目されないなら、自分で自分に注目してもよいと思った次第。交流のある外山恒一さんにも影響を受けた感じかな。

―なるほど、そう聞くとあなたはとても自己主張が強そうに思えますが。
実際は真逆で、自分のことをとにかく秘密にするタイプで。行きの電車で何の音楽を聴いていたかさえ人に知られたくないからね。

―そんな人が、よくイベントをやる気になりましたね。イベントをやるきっかけは?
きっかけは、ぼくの古くからの友人が大阪で、「捨てられないフライヤー展」をやってる様子をツイッターで書いていた事かな。実はイベントホームページすら見ていないのに、そのイベントの主旨が何となく分かって、なおかつ面白いと思ってて。あるとき、彼がぼそっとつぶやいていたツイートが、ぼくには「東京でもやらないのかと言われるけど、そんな言うなら自分からやればいいじゃん!」という風に読めて、それに触発されたという感じかな。そういうと、なんか威勢の良いように聞こえるけれど,最初は共通の友人に向けて、「東京でもやりたいね」とかぼそっとつぶやいてたりして、実は消極的だった。でも、そうやってたって始まらないなと思い至り、それなら一人でやればいいや、と思って始めた。

―一人だといろいろ大変じゃないですか?
うん。というか、そもそも一人でやるというのが大きな間違いだったよね。だって、フライヤーを貸してくれる人がいなければ成立しない時点で、もう一人じゃないよね。イラストを提供してくれた山本直樹さん、デザインしてくれた佐々木さん、皆さんの助けがないと、何も出来なかったと思う。実際にね、一人で何でも背負い込むよりも、これやってくれない?と頼む方が、周りもサポートしやすいし、こっちもモチベーションが上がる。それに気づいたのが、ちょっと遅かった感じもあるけれど。

―イベント準備で一番大変だったことは何ですか?
うーん、そうだなぁ、一番は自分のモチベーションを保つことかな。イベント準備と言うよりは、それ以外での実生活での仕事などでいろいろとモチベーションをそがれることが多く、どうも準備が遅れがちだった。あと、フライヤーを貸してもらえる人が、実は最初の頃はなかなか集まらなかった。大阪のイベントをやった吉田君はもともと「おとうた通信」というイベントをやっていると言うこともあって、ある程度ミュージシャンにも名前が売れて集めやすかったんじゃないかと思っているけれど、ぼくは本当に知り合い伝いで声をかけていくしかなかったからね。本当は、インディーレーベルをやっているようなアーティストにもどんどん声をかけたかったけれど。まぁ、実際は吉田君もいろいろ苦労したんだと思うけれどね。何かを始めると言うことはそういうことだと思う。

―さて、本展の見所はどこですか?
もともとの意図としては、昔こんなアーティストとあんなアーティストが競演していたんだ!みたいな面白さがフライヤーから出ればいいと思ってたし、それが展示タイトルの「想い出」につながってるんだけれど、もちろんそういうものもいっぱい集まってきたけれど、それ以外にもたとえばインディーアーティストが自分の音楽を売り込む媒体として作ったフライヤーが面白いんですよ。たとえばある人はとっても文章が面白かったり、キャラクター性が抜群だったりするんですよ。ある意味、昔の怪文書的な面白さがある。フライヤーって、ほとんどの人が捨ててしまうものでしょう? だからそれだけに、こんな事やってたんだとか、そういう発見がフライヤーにはある。

―なるほど。
あと、園田佐登志さんのトークショーも見物だよ。もともとMixiでマイミクで、園田さんがたくさんフライヤーを持っていることは知ってた。そのことがイベントをやろうと思ったきっかけでもあるんだけれど、吉祥寺マイナー周辺の音楽シーンがどういう感じだったか、すごく興味があった。現代音楽、フリージャズ、フリーミュージック、パンクが渾然一体とした感じのシーン。それが、秘蔵のフライヤーと音源で明らかになるんだよ。音楽好きなら見ないと始まらないと思う。とにかく自分は見たい。

―フライヤー展のフライヤーもありますね。
うん、山本直樹さんのイラストを使わせてもらってる。なぜ山本さんかというと、山本さんの漫画ってエロだけじゃなくて、ノスタルジーとアンニュイがあるでしょ。前向きと言うよりは、失われたものへの憧憬というのが、ものすごく感じられるわけ、自分にとっては。その視線とフライヤーというある意味音楽の生き証人を見る目というのは、ものすごく近く感じると思った。フライヤーにもエリックドルフィーの言葉を引用して書いたけれど、音楽というのは一度奏でられるともう取り戻せないんだよ。音楽を聴いたときの感動や想い出は一度きり。だから、音楽というのは何度でも聞こうという気になるんだ、というのは菊地成孔さんの隠れた名言の一つだと思ってるけれど、まさにその通りだと思う。二度と取り戻せないから、取り戻そう利ちゃんうんだよね。

―最後に一言お願いします。
もう終わりなの? ま、いいか。とにかく、展示が始まっても、まだまだフライヤーを募集してます。もうこれだけ集まれば十分、というのはぼくにはなくって、どんどん今からでも交渉しているし、実際、フライヤー展のフライヤーに載っている以外の人もどんどん追加されているから、是非見に来て確かめて欲しい。ひょっとしたら最初の方と終わりの方では、全然展示が違っている可能性もあるね。あと、カフェはタダで貸してくれたので、ぜひコーヒーでも頼んでもらえると、きっとお店の人も喜ぶと思うよ。ちなみに、お店をやってる会社はボアダムスのライブを後援したことがあるらしい。ま、ともかくいろんな意味で楽しんでもらえたら嬉しい。

(インタビュアー・自分)

「想い出のフライヤー展」開催に寄せて

大阪で「捨てられないフライヤー展」という展示を企画したところ、「東京なら行ったのに…」といった反応が少なからずあって、何だかなーという気持ちになっていた時期がありました。そんな時、「東京で独自にやりたい」と細谷さんが言ってくれたのがどれだけ嬉しかったことか…。先人たちもそういった精神で人々の記憶に残るイベント/フライヤーをつくってきたのだと思います。
さて、同じフライヤーをテーマにした展示でも、土地や参加者、展示の切り口が変わるとまったく違った内容になるはず。それくらい深みのある題材なのは間違いないので、細谷さん流の料理法や個々人の「想い出」が染み出てくるようなフライヤーが見られるのを楽しみにしています。

吉田雅生(おとうた通信)

協力者(50音順、敬称略)

出展協力者

神谷きよみ、北田了、crazy-potatohead、工藤一幸(ジャズCDの個人ページECM Blog)、kataru2000後関好宏stim、ex.DCPRG)、佐伯一彦(ウツボのはてな日記新宿文藝シンジケート)、斉藤基史、佐藤公哉、junne(NOIZ NOIZ NOIZ)、新谷圭子、園田佐登志DJ PooL SharK、NURU(IN THE 家!)、藤井輝男(京都錦小路・津之喜酒舗)、Bronze Sambe、南博、村上巨樹(デストリオ、石割桜、te-ri)、安田理央、吉田雅生(おとうた通信
(まだ途中です。出展予定者を含む)

その他、協力
i-cafeのみなさん

サイト/フライヤーイラスト
山本直樹
フライヤーデザイン
佐々木直

皆様の協力がなければ、このイベントは開催できませんでした。ありがとうございました!